トップページ > ベンチレーターをつけた仲間たち >

渡辺 正直さん

佐藤:

まずはご当選おめでとうございます。渡辺さんが、全国初のベンチレーター使用者の議員になっていただいて、私もとても感慨深い思いがします。本当に渡辺さんの勇気に感謝です。

渡辺:

ありがとうございます。

佐藤:

まず出馬を決意されたきっかけ、理由などを聞かせて下さい。

渡辺:

静岡市では、以前より「虹のたねまき委員会」で私たち障害者運動から議員を出そうということで、健常者の議員を議会に出していました。3期目を向かえるにあたって、もうそろそろ障害当事者を議会に送ろうという思いを前任者はもとより私自身も持っていました。 本人も私たちには3期目はでないっていってましたし。8年前にもそのことを考えたりしたのですが、体力的な自信がなかったもので。今回立候補した最大の理由はやっぱり体力です!夜間のベンチレーターを付けてからというもの、俄然体調がよくなったんですよ。ベンチレーターをつける前のころがウソみたい。

佐藤:

そうですね。以前よりも体がガッシリしたというか、体重も増えたんでしょう?

渡辺:

そうなんです。あきらかに増えました。医者もみんなもびっくりしてますよ。あの時、気管切開を嫌がっていたら、今ごろどっかの墓標になってたかも(笑)。気管切開をした後、カニューレで声が出なかったじゃないですか、あの時は元気がなかったけど、カニューレを変えてしゃべれるようになってから、ものすごい元気ですね。

佐藤:

今使ってるカニューレは何ですか。

渡辺:

アーガイルです。昔はボーカレイドを使ってました。今度、四国へ市議会厚生委員会の視察があるんですが、2泊3日で丸亀と高知へ行ってきます。私のLP-6プラスもIMIで直接ホテルに運んでもらうよう手配してるんですけど。その次の視察が1泊2日で福岡なんです。

佐藤:

え〜!2泊3日や1泊2日でそれだけの移動をするなんて、体力がなきゃできないですよね。議員の仕事ってほんとに体力勝負なんですね。

渡辺:

ほんとにそうです。それともうひとつ立候補の大きな理由になったのが、自立生活運動の大きなテーマである、「福祉の受けてから担い手になる」ということ。やっぱり、行政の政策決定の過程に、障害当事者が参加しないとね。福祉サービスを利用する側が福祉サービスを改革する時代に入ってきているし、何が一番大切かということを知っている人たちが、政策を決めていかなければと思ったんです。体力には自信がついたので、今を逃すとチャンスはないだろうと。

佐藤:

で、選挙の結果はどうでしたか。

渡辺:

45人中27番目でした。当選したからには責任重大ですね。

佐藤:

ベンチレーターをつけて空気をいっぱいすって、今まで以上に体力つけて下さい(笑)。選挙期間中のエピソードとか何かありませんか。

渡辺

選挙運動中は、とにかく雨、雨、雨、雨ばっかり…。晴れたのは1日だけだったかな。投票日の前日はびしょぬれ!市内の目抜き通りをカッパを着ながら演説しました。

佐藤:

え〜!カッパを着ながら演説したんですか!

渡辺:

そう。1日6ケ所くらいで街頭演説。5分の予定が10分になったり。選挙期間中は、みんな熱心に聞いてくれましたね。自分自身では、結構手応えがあったように感じます。大きく二つのことを訴えました。ひとつは今まで障害をもった人たちが存在しないかのように、議場の中ではまったく考えられてこなかったわけです。だからやはり議会に障害当事者を送ろうということ。そして一般の市民の人たちにも、自分にも障害をもつ日がくるかもしれないんですよ、そのときに暮らしやすい社会を今からつくっておきましょうよ、ということを繰り返し訴えました。

佐藤:

かなりハードな選挙戦だったんですね。準備期間にどのくらいかかりましたか。

渡辺:

ちょうど足掛け1年ですね。立候補を決意したのが昨年の1月8日ですから。それから3期目は障害当事者の私が立候補するということを、支持団体に理解してもらうのにだいぶん時間がかかりました。正式にみんなの合意が得られたのが去年の9月ですね。私の場合、町内会の代表じゃないから結構大変だったんです。

佐藤:

渡辺さんは全市選出ですよね。

渡辺:

そうなんですよ。静岡市は北から南まで結構長いですから。南アルプスまで静岡市ですからね。北から南まで60km以上ありますから。1週間でほぼ市内一円をまわりました。私も選挙は素人だし、みんなも手弁当でやってくれてました。

佐藤:

選挙ポスターももちろん作ったんですよね。

渡辺:

ええ、作りました。2月の中旬くらいに、市内の公園で撮ったんですけど、そのカメラマンの人のお子さんが4月になって、ドクターの診断を受けたら、筋ジストロフィーだとで診断されてね。なんか、これは奇遇だと思ったりしました。そんなことがあったりした選挙ですが、選挙はいろんな人と出会えるから面白いですよね。

佐藤:

私も以前、選挙に立候補することも考えたんですが、最終的には体力に自信がなくてやめました。渡辺さんの話を聞いてると、やっぱりやめてよかったナと(笑)。ほんとに体力のいる仕事なんですね。それで渡辺さんのひとつの目標だった議場のバリアフリーは実現してますか?

渡辺:

初登庁が5月15日だったのですが、当選してすぐに議会事務局から連絡がありまして、議場の改造にとりくむことになりました。ちょうど議員定数が48人から45人になったのでその分のスペースを車椅子用にしました。しかし議員席に行くまでに階段があるのでスロープを付けました。それから質問をする演壇が車いすでは利用できないので改造が必要でした、でも6月の一般質問では間に合わなく演壇の横で質問したんです。9月議会には間に合いました。演壇が昇降式になり車いすのままでも演壇に立つことが出来ました。

昇降式の演壇は他の議員にも好評でしたよ。背の高い人も低い人も、自分の背の高さに合わせられるんで。今までは背の低い人は、足台をおいて演壇の高さに合わせてたんですから。あと男子用トイレに車椅子用トイレも付きました。私としては、私個人のためというより、ユニバーサルデザインとして誰もが使えるものにしてもらい、女子用トイレにも車椅子用トイレを設置して欲しかったんですが…。渡辺という一議員のために作ったという様なマスコミの報道にも苦慮してるんです。一般市民から、なぜ渡辺議員のためだけに設備を作るんだという苦情が寄せられるんですから。

佐藤:

そうなんですか!議場のバリアフリーも大変ですね。ほんとに渡辺さんがおっしゃるとおり、今元気な議員の方も障害をもったり高齢になると、スロープや車椅子用トイレが役にたちますよね。

渡辺:

そうなんです。私一人のためというより、みんなが使える議場になってほしいと思ってます。ただ、私が障害当事者ということで、もう障害者の存在を無視できなくなっているんじゃないかなぁ、という実感はあります。あと、議場内の介助は議会事務局の職員がやることになっています。質問の時いちいち原稿をめくってもらうのはめんどうくさいと思って、ノートパソコンを持ち込んでその画面をみながら質問原稿を読もうとしたんですが、途中で電源がきれちゃって(笑)。

佐藤:

少しずつ着々とバリアフリーが実現していくことを願っています。議員活動はもうすっかり慣れましたか。

渡辺:

そうですね。まだ板につかないというか…。議員になると背広とネクタイをしなくちゃいけないでしょ。それが慣れなくて(笑)。ちなみに、私は議場の中でも外でも議員バッジははずしています。バッチつけるつけないでいろいろと言われたりする事もあるそうですが、形式にこだわるのが議会なんですよ。

佐藤:

そうなんですか。私はバッジをしない渡辺さんを支持しますけど(笑)。さて当選して半年あまり。議会活動の成果はありましたか。

渡辺:

私は政党無所属ですので、会派は無所属の市民派議員だけで作っている「市民自治福祉クラブ」に所属しています。6月議会には車椅子の議員が誕生したことについての市長の考えを聞いたり、障害者プランの問題点、特に政策過程に障害者の参加について質問しました。9月議会では知的障害者の地域支援やガイドヘルパーの利用について質問しました。議会では希望通り厚生委員をやっているんですが、当然議員ですから障害者や福祉問題だけをやってるわけにはいかないんです。全ての議案に目を通してイエスかノーを決めなくちゃならないんです。議案について他の委員会でどんな議論がされているのか傍聴しなくちゃいけないし。

佐藤:

そうなんですかー。ほんとに議員の仕事は忙しいんですね。私の想像をはるかに超えてました。私なんかは、所属する厚生委員会だけ出てればいいんじゃないか、なんて思ってたりして(笑)。 ほんとうにベンチレーター使用者の議員がこの日本に誕生するなんて、私が自立生活を始めた10年前には想像さえできませんでした。少しずつ社会は変革されているんだということを、こうして議員になられた渡辺さんを目の前にして、深く実感しているところです。これからの4年間、いえ次の選挙もぜひ出ていただいてベンチレーターをつけた体力を武器に障害者、特にベンチレーター使用者のために活躍して下さい。

渡辺:

ありがとうございます。期待に応えられるようがんばりたいと思います。これからも応援してくださいね。


トップページ > ベンチレーターをつけた仲間たち >